膝に水が溜まった原因は??関節水腫と関節血腫とは??

膝に水が溜まることは整形外科外来では頻繁にみられる症状です。

では水が溜まってしまう原因になりうる疾患にはどのようなものがあるのか解説したいと思います。

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1.関節水腫と関節血腫とは??

膝の関節は滑膜と線維膜(合わせて関節包)という袋状の組織で覆われています。

そしてその袋の内には正常で2〜3.5ml以下の関節液が存在しています。

その関節の液を滑液と言います。

上の図ではピンク色の関節腔という関節包で作られる関節内の空間があり、

その袋の中を滑液が満たしています。

そのため正常の膝にも水(滑液)は溜まっています。

しかし何らかの原因でこの関節内に滲出液が増えることがあります。

これを関節水腫(いわゆる水が溜まった状態)と言います!

そして注射で関節内の水分が出血によるもの(血が混じっている場合)を関節血腫と呼びます!

2.関節水腫、関節血腫の原因は??

正常の膝では関節液が過剰に溜まる関節水腫や血腫がみられることはありません。

そのためこれらの症状が見られた場合は原因を考えなければいけません。

McCarty DJ : Arthritis and allied condition.Lea&Febiger,Philadelphia,1985 より引用

McCartyによる関節水腫と関節血腫の関節液の性状による疾患分類が上の表になります。

関節液の性状とは、関節液の細胞数や粘稠度、量などのことを言います。

関節に水が溜まった場合、これらの疾患を念頭に置き原因を考えていきます。

日常でもよく聞く膝が腫れたという症状ですがこれだけたくさんの疾患(これ以外にもまだありますが、、)から考える必要があるのです。

膝が腫れるというと整形外科に来院されることが多いと思いますが

整形外科以外の疾患でも膝に水が溜まることがあるのです!

ではどのようにしてこれらの疾患を見分けていくのかを解説します。

a.正常な膝の関節液(滑液)

正常膝の滑液は

・関節液の量が3.5ml以下

・粘稠度(関節液の粘り気)は高い

・色調は無色〜微黄色

・細胞数(ml)は200

・多核白血球25%以下

になります。

b.非炎症性(Ⅰ群)

非炎症性の場合で多いのは変形性膝関節症です。

変形性膝関節症は以前の記事(変形性膝関節症の痛みの原因② 滑膜の痛み)で水が溜まると解説しました。

変形性膝関節症では滑膜の炎症により滲出液が出てきます。

この液は非炎症性の液で

・関節液の量が3.5ml以上

・粘稠度(関節液の粘り気)は高い

・色調は微黄色

・細胞数(ml)は200〜2000

・多核白血球25%以下

という特徴があります。

水を抜いた時に正常よりやや黄色っぽい色をしており、炎症の増加ではないため白血球数は少ないです。

c.炎症性(Ⅱ群)

炎症性の場合

・関節液の量が3.5ml以上

・粘稠度(関節液の粘り気)は低い

・色調は黄色

・細胞数(ml)は200〜2000

・多核白血球50%以上

という特徴があります。

代表的なものが関節リウマチです。

関節リウマチは自己免疫性疾患で関節の炎症を主体とし

関節水腫、腫脹、疼痛が出現します。

この関節水腫の液は炎症により白血球が増えます

色も正常と比較すると黄色になり、細胞数が増えるため正常時は透明だがやや混濁(にごった状態)も強くなります。

また炎症が起こると

・関節液の量が増えヒアルロン酸が薄まる

・酵素による分解

の影響で関節液の粘稠度は低下する。

適度な粘稠度のおかげで関節軟骨の摩擦を防いでいますが

この粘稠度が薄まることで軟骨同士の摩擦が増えてしまいます。

*イメージは粘り気のある油(ヒアルロン酸のこと)を骨に塗ってツルツルさせ摩擦を防いでいたのが、

シャバシャバの水のように薄まり軟骨の摩擦が増えてしまい傷みやすくなってしまうのです。

d.化膿性(Ⅲ群)

化膿性の場合

・関節液の量が3.5ml以上

・粘稠度(関節液の粘り気)は低い

・色調は黄色〜膿性

・細胞数(ml)は100000以上

・多核白血球75%以上

という特徴になります。

化膿性関節炎の場合、化膿性の関節液が確認されます。

化膿性関節炎は何らかの原因でグラム陽性球菌などの細菌が入りこみ発症します。

膝関節、股関節などの大関節の体重がかかる関節部分に激しい痛みや腫脹,関節水腫,発赤,熱感が生じます。

またこれらの症状が急激に発症することが多いとされています。

治療はこの起因菌が何か?を同定しその菌に対して抗生物質を使用していきます。

そのため関節液を抜き、その菌を調べるために検体を行います。

化膿性の関節液は透明ではなく混濁しており、

白血球や死んだ細菌などを含むため膿性(黄色や緑などの色がついた)をしています。

e.出血性(Ⅳ群)

出血性の場合は関節血腫のことを言います。

そのため関節液に血が混じっていると出血性になります。

出血性の原因としては

・外傷などにより発生する外傷性関節内出血

・自然発生性関節内出血

に大きく分けられます。

外傷性は骨折などで関節内に血が溜まってしまうことです。

自然発生性は明らかな外傷がないにも関わらず関節内に血が溜まってしまう場合です。

血友病や腫瘍性により生じます。

3.まとめ

今回は関節水腫と関節血腫について解説しました。

・膝が腫れた

・膝に水が溜まった

という症状はよく耳にすると思います。

しかしこの原因として今回説明しただけでもかなり多くの疾患が考えられることがわかるかと思います。

水が溜まっている状態は膝にとってはよくないです。

水をひかすためには水が溜まる原因に対しての治療が重要になります。

今回の解説でそれぞれの疾患によって原因が全く違うことがわかるかと思います。

そのため同じ水が溜まった状態でもその人それぞれで治療方針も大きく変わるので

もし水が溜まったり、膝が腫れている人は専門医に診察してもらうことがおすすめです。

ではまた次回!

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