今回は整形外来でよく聞く
『滑膜ひだ』、『タナ障害』について解説します。
1.滑膜ひだってなに??
まず『滑膜ひだ』について解説します。
まず成人の膝は滑膜という袋で関節に空間を作っています。(関節腔)
GRAY’S ATLAS OF ANATOMY SECOND EDITION,Richrd L.Drake他,P326
上図のピンク色の部分が滑膜になります。
滑膜とは関節の中にある膜です。
この滑膜があるおかげで軟骨に栄養を運んだり、関節液(ヒアルロン酸など)がもれないように閉じ込めて
関節のスムーズな動きを助けています。
胎生期(母親の胎内にいる時期)の膝関節は
膝蓋上嚢、内側大腿脛骨関節、外側大腿膝蓋関節の3つに分かれています。
胎生10週を過ぎたあたりからこの3つの部分の隔壁は退縮し
1つの関節腔となります。
GRAY’S ATLAS OF ANATOMY SECOND EDITION,Richrd L.Drake他,P326から引用改変
上図は成人の膝で関節腔が1つになっていますが
胎生期は赤丸の部分にそれぞれ部屋があり
3つに分かれています。
この時の隔壁(部屋を区切っていた部分)の遺残が滑膜ひだと呼ばれています!
2.タナ障害ってなに??
先ほど説明した滑膜ひだですが
膝関節内には
・膝蓋内側滑膜ひだ
・膝蓋外側滑膜ひだ
・膝蓋上滑膜ひだ
・膝蓋下滑膜ひだ
の4つの滑膜ひだがあります。
中瀬順介他:膝滑膜ひだ障害,膝滑液包炎の診かた.MB Orthop Vol、33 No,9:22.2020.
それぞれの滑膜ひだの発生率は膝蓋上滑膜ひだ9.1~55%、膝蓋内側滑膜ひだ18.5~80%、膝蓋外側滑膜ひだ1%未満、膝蓋下滑膜ひだ85%と報告されている。
Schindler OS:‘The Sneaky Plica’revisited: morphology, pathophysiology and treatment of synovial plicae of the knee. Krlee Surg Sports Traumatol Arthrosc.22:247-262,2014.
そして臨床的に問題となることが多いのは
膝蓋上嚢の内側壁から膝蓋骨内側を通過して膝蓋下脂肪体に付着する膝蓋内側滑膜ひだです!
そして日本では膝蓋内側滑膜ひだを『タナ』と呼び
膝蓋内側滑膜ひだ障害を『タナ障害』と呼びます。
膝蓋内側滑膜ひだの分類としては榊原の分類が用いられている。
これは膝蓋内側滑膜ひだを関節鏡的に分類したものです。
中瀬順介他:膝滑膜ひだ障害,膝滑液包炎の診かた.MB Orthop Vol、33 No,9:27.2020.
- A型:内側壁の索状隆起で本滑膜ひだの痕跡とみられるもの
- B型:いわゆるタナの形を示すが鏡視下に大腿骨内側顆の前面を覆わないもの
- C型:巾の広い棚状の外観を有し、 鏡視下に大腿骨内側顆の前面を覆うもの
- D型: 内側への付着部が2本に分かれた特殊型
の4型に分類されています。
Nakayamaらは日本人3889膝を対象として膝蓋内側滑膜ひだ報告の発生率と分類を報告している。その結果、膝蓋内側滑膜ひだの発生率は79.9%で榊原分類ではA型が35.2%、B型が22.4%、C型が12.3%、D型が10.0%であったとしています。
Nakayama A,et al:Incidence of medial ptica in3,889knee joints in the Japanese population. Arthroscopy,11 :1523-1527,2011
3.まとめ
今回の説明をまとめると
滑膜ひだとは胎生期の滑膜の残りの部分で
その中で膝蓋内側滑膜ひだのことをタナと呼ばれている
ということになります。
医療職でも膝の痛みの説明でタナ障害ですと言ったり、滑膜ひだの痛みですねと言ったりしてしまっています。
同じことを言いたくてもこの辺りの知識がないとごちゃっとした説明になってしまいます。
滑膜ひだ、タナ障害は整形外来で頻繁に遭遇する疾患ですので今回の内容を意識してみましょう。
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