今回は前回の記事(滑膜ひだ障害って??タナ障害??)の続きで、タナ障害の症状と実際のリハビリの方法について解説します。
1.タナ障害ってどんな症状?
前回の記事のおさらいですがタナ障害とは膝の滑膜ひだのうち
膝蓋内側滑膜ひだによる障害のことを言います。
臨床的な症状として
・膝のお皿の内側の痛み
・膝の引っかかり感がある
・膝の不安定感がある(踏ん張れないなど)
などの訴えが多いです。
発生機序としてはスポーツ活動などによる繰り返す膝関節の屈伸が誘因となることが多いですが、
膝関節内側や膝蓋骨への軽微な外傷が契機となることが多いです。
2.チェック方法
内側膝蓋大腿関節の圧痛を確認します。
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1608.jpeg)
またこのあたりを触れると肥厚した滑膜ひだを触知できることもあります。
滑膜ひだはレントゲンには映らないため、膝の内側の痛みが続く場合MRIをとります。
MRIでは滑膜ひだは確認することができますが、前回の解説の通り
滑膜ひだは胎生期の残存物でこれ自体があるからといって病的とは言えません。
そのため滑膜ひだの確認と上記の症状や痛みの程度を確認しながら治療方法を決めていきます。
3.治療方法は??
治療は保存療法(手術しない方法)が第一選択になります。
・局所安静
・関節内or滑膜ひだへのステロイド注射
・リハビリ
をまずは行います。
それでも痛みの改善が乏しい場合手術を考慮します。
手術は鏡視下滑膜ひだ切除が行われます。
これは関節鏡を用いて引っ掛かっている部分の滑膜ひだを切除します。
しかし下記のような報告もあります。
1995年以前に行われた手術969例のメタ解析では術後完全に症状が消失したのは64%のみであり、残りの36%の症例では疼痛が残存したという報告があります。
Schindler OS:‘The Sneaky Plica’revisited:morphology,pathophysiology and treatment of synovial plicae of the knee. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.22:247-262,2014.
そのため手術するかどうかは慎重に考える必要があるとされています。
4.リハビリってどんなことをすればいいの?
ではリハビリではどんなことを実際に行なっているのかを解説します。
タナ障害で問題となることが多いのは
膝蓋上嚢の内側壁〜膝蓋骨内側を通過して膝蓋下脂肪体に付着する膝蓋内側滑膜ひだです!
発生機序のところで説明したように軽微な外傷や繰り返しのストレスなどが関係していることが多いため
この滑膜ひだ周辺の組織の動きが悪いと痛みにつながります。
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この膝蓋上嚢と膝蓋下脂肪体の間を下の図のように膝蓋内側滑膜ひだが通ります。
中瀬順介 他:その他(2):鷲足炎・タナ障害の診断と治療.MB Orthop Vol 35 No1 2022,96
そのため外傷などで腫れたりするとこの膝蓋上嚢や膝蓋下脂肪体の動きが悪くなります。
そうするとこの2つを結ぶ滑膜ひだの動きにも影響を与え痛みにつながる可能性があるため
これらの組織の動きを改善していきます。
膝蓋上嚢はお皿の上にあります。
だいたい指3本分くらい幅があるので指を当てます。
骨に向かって押し付けながら円をかくように動かしてほぐします。
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1810.jpeg)
次に膝蓋下脂肪体の動かし方です。
膝蓋下脂肪体は名前の通りお皿の骨(膝蓋骨)の下に位置します。
お皿の下部分に指を当てつまみながら左右に動かすと膝蓋下脂肪体の柔軟性が向上します。
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1811.jpeg)
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1812.jpeg)
そして膝蓋大腿関節(お皿の骨と大腿骨との関節)での痛みのためお皿の動きも重要になります。
動かし方はまずお皿を挟みこむように把持します。
そして上下、左右、斜めの8方向を意識して動かしていきます。
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1813.jpeg)
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1814.jpeg)
図のようにお皿が逃げないようにしっかり把持した状態で動かします。
横、斜めも同様に動かしていきます。
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1816.jpeg)
![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1817.jpeg)
ポイントは膝の筋肉に力が入っているとお皿が動かしにくいため、
できるだけ脱力した状態で行います。
また膝を伸ばした方がお皿の動きが出せるためできるだけ膝を伸ばした状態で行います。
最後にお皿についている筋肉をしっかり動かしていくことで
お皿周辺の柔軟性が向上します。
動かした方はまず膝を少し曲げた状態で膝蓋上嚢のあたりをつまみます。
その状態で膝裏を床に押し付けるように力を入れます。
膝裏で床を押すと、膝が伸びお皿の骨が上に動くのがわかると思います。
この動きを繰り返すことでお皿周辺の組織の動きが改善されます。
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![](https://rehabilitation-zyouhou.com/wp-content/uploads/2022/12/IMG_1819.jpeg)
ポイントはお皿をしっかりと上(黄色矢印)方向に引き上げることです。
この動きを意識することでより膝蓋下脂肪体や膝蓋上嚢の動きをよくできます。
5.まとめ
今回は症状とリハビリ方法についてお伝えしました。
安静や注射だけでよくならない場合いきなり手術されることもあります。
ただ今回ご紹介した報告にあったように手術後必ず痛みが改善するわけではありません。
そのため治療方法に関して状態をみながら考えていくことが大切になります。
その中で今回紹介したリハビリの方法を行うことで痛みが改善することも多くあります。
痛みで困っておられる方は是非一度試してみて下さい。
ではまた次回!
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