今回は前回(膝離断性骨軟骨炎ってなに??③ 〜治療はどうしていくの?保存療法の場合〜)の
続きで手術の場合について解説していきたいと思います。
1.どんな時が手術になるの?
まず手術療法がどんな時に選択されるかですが
adult OCDでは自然治癒力が乏しく
保存的治療の成績が不良とされているため手術が選択されます。
以前の記事で解説したので簡単にadult OCDについておさらいですが
骨端線閉鎖不全・骨端線閉鎖後のOCDのことを言います。
またMRIで病巣部の不安定性が認められた場合も手術療法が選択されます。
2.手術の方法① ドリリング(骨穿孔術)
手術の方法はいくつかあり、画像や実際に関節の中を確認し評価し決定されます。
今回はその1つ ドリリングについて解説します。
これは名前の通りドリルのように削る方法です。
もう少し細かく説明すると、細い銅線で病変部(海綿骨)を貫く小さな穴を複数開けます。
そうすることでわざと出血させ、修復のための組織(成長因子や骨髄間葉系幹細胞)を新たに傷んだ部分に流入させます。
そして病巣部の軟骨の修復と治癒を促す方法です!
ドリリングのメリットは関節鏡視下で行えることです!
関節鏡とは上図のようにカメラを入れモニターで覗きながら手術する方法です。
胃や大腸の内視鏡と同じ原理です。
この方法だと皮膚を大きく切開する必要がなくカメラなどの手術器具を入れるため
数カ所に小切開するだけで済みます。
そのため
・体へのダメージが少ない
・傷の跡がわかりずらい
などのメリットがあります!
そしてドリルするための銅線の入れ方で
・順行性ドリリング→関節軟骨から傷んだ軟骨部にドリリング
・逆行性ドリリング→関節外から病巣にドリリング
の2つに分けられます。
軟骨側から入れる場合は先ほど説明した関節鏡視下で行います。
なので
膝に数カ所小切開しそこからカメラで傷んだ場所を確認しながらドリリングを行う
という流れになります。
これはカメラで傷んだ部分を確認しながら行うので正確にドリリングすることができ、
また手技的にも容易とされています。
ただデメリットもあります!
以前説明したNelson分類のGrade1の場合、軟骨は正常も軟骨下骨に異常があり
カメラで覗いたとしても傷んでいる境界がわからない場合も少なくないとされています。
また正常軟骨部分を損傷してしまうデメリットもあります。
関節外から入れる場合、透視下(レントゲンで写すようなイメージ)で行います。
関節外から入れるため順行性とは違い関節軟骨にドリリングを行わなくて良いため
軟骨損傷を伴わないメリットがあります!
デメリットは
・被曝量が増える
・順行性と比較し病変部のドリリングがまんべんなく行えていない可能性がある
が挙げられます。
3.手術の後はどうするの??
術後は2〜4週間の免荷(体重をかけない)を行います。
なので松葉杖を使用した生活になります。
そして2ヶ月以降に運動を開始するのが望ましいとされています。
この辺りはどのくらいドリリングで削ったか?などの状況により異なる部分ではあります。
ドリリングの成績をまとめた報告では4~6ヶ月の経過観察で
86〜91%のレントゲン上の骨癒合を認めたと報告されています。
Gunton MJ, et al:Drilling juvenile osteochondritis dissecans:retro-or transarticし11ar?Clin Orthop Relat Res.471:1144-1151,2013.
4.まとめ
今回は膝離断性骨軟骨炎の手術療法について解説しました。
今回紹介したのはその中の1つであるドリリングです。
この方法は体へのダメージも少なく術後の成績も良好なため
よく選択される手術方法です。
ただ傷んだ部分があまりにも大きい場合などはドリリングしたとしても修復しきれない
可能性がるため別の方法が選択されます。
次回はドリリング以外の別の方法について解説したいと思います。
ではまた次回!
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